雨降る前



 駅へと続く大通りへと路地裏から直角に方向を転換させようとした瞬間、鼻先にツンとした何かがあたった。はて、虫でも飛び込んで来たのかな? とごしごしと小鼻をこすってみると、そこを放した指先はうっすらと紅く染まっていた。
「こんなとこで? 冗談じゃないよ・・・」
 文香(ふみか)は慌てて上着からハンカチを取り出すとその鼻に当てた。幸いなことにそれほど出血はひどくはないらしく、しばらくそうしていればとりあえずはその場はしのげそうな感じであった。とはいえ、やはり大きな鏡で身だしなみくらいは確認してから帰途につきたいという気持ちもあるわけで。
「ちょっとくらい遅れても、まぁ別にいいよね。事情が事情だし」
 そう思って表通りに出てすぐのチェーン店の喫茶店の扉に手をかけた。

 レジ前を素通りして足早にトイレに入るとしげしげと自分の顔を中心から確認にかかる。ハンカチをどけてみるそれはやはり自分の判断が正しかったとでも言いたげで、鼻骨の脇から目の下にかけて最初にこすった軌跡がそのまま顔に筋を作っているところ。文香はやれやれ、とハンカチを水に浸すとその筋をなぞるようにして消しにかかる。
 実のところこういうことは今まで全く経験がなかったというわけではなく、それまでも何度か---そのうちの何度かはこんなものじゃないくらいにひどく---顔を汚したこともあったので、比較的気持ちは落ち着いたものである。
 でもな、待てよ。
 ふと、手を止めて鏡を見る。
 ここ最近。一番最後にこうしていきなり鼻血出したりしたのは一体いつくらい前だったかな。
 あらかた汚れの落ちた顔を眺めるではなく、ぼんやりとその場で立ち尽くしてその疑問をしばし考えてみた。ぼんやりと曇った記憶の隅で、誰かの人影を思い出しそうになる。今となってはもう遠い、そんな過去の中にいる、「誰か」の顔・・・。
「?」
 キィ、と軽く蝶番のきしむ音がして、足音が短い通路を抜けて自分の脇をすり抜けた。振り返らず鏡越しにその姿を見る感じ、自分と同じか、わずかに若いという年齢の女性(あたりまえ)だろうか。じっと鏡に向かっている文香にちらりと観察するような目をむけ、さらに奥にある個室に消える。流れる水の音に、文香は瞳を閉じた。中断させられてしまった記憶の断片に、もう一度チャレンジしてみたくなったのだ。
 普段であれば実にとるに足りないことだし、それを思い出したからといって、何か自分にとってよくなったり悪くなったりということもなかろうに、とは思うけれどもどうしても気になる。なぜか、どうしても思い出しておかないと悪いのではないかというような、そんな無用に追い詰められた感覚でもある。
「確か・・・あれはまだ学生だったときの・・・みんなで集まってて・・・」
 高校生? 中学生ということはないだろうか? 当時の友人で今は連絡もとっていない数人と一緒にふざけている最中のこと。そこで、確か。
 激しく水の流れる音がした。
 はっと顔をあげてまた鏡に向かうとそこにはまた先ほどの女性が扉を開く様子が映っている。再度、回想を中断させられて、文香はやや機嫌悪く首を横に振った。女性は、個室を出てから自分の隣へと歩み寄り、並んだ洗面台の蛇口の下に手を入れる。
 水の流れる音。女性がこの場を出たらまたもう一度考えよう。そう思って相手の顔をなるべくみないようにとしていた文香だったのだが。どうも、そういうわけにはいかないようだ。
 女性は、水を流し終え、壁のペーパータオルを引き出し指先を拭いながら。じっと、じーーーっと。多少ぶしつけとも思えるほどの程度で、文香のことを見つめていたのだった。
「あの?」
「何ですか?」
「あ・・・えーと。その・・・」
 何かを言いよどんだように、女性は言葉を止める。視線を自分から外さずにペーパータオルを足元のごみ入れに落とすところまでを見て、文香はようやく顔をあげて相手を直接見た。
「何ですか? 何か御用なんですか?」
「あ! やっぱり!」
 いきなり予想外な返答。逆に面食らった文香が相手の顔をまじまじと見つめる。
 そこにいたのは、黒目がちながら切れ長な、特徴的な瞳の持ち主。
「ね、あなた文香でしょ? えーと。そう、南雲文香さん。そうでしょ?」
「え・・・? どうして、それを?」
 あたりまえじゃない、だって。と、女性は姿勢をまっすぐに伸ばして、目を細く笑顔を返す。
「覚えてない? 私、風間美冬(かざま・みふゆ)だよ。ほら、S高校で一緒だったさ」
 唐突に、さきほどまで自分を悩ましていた記憶がさぁっと明るくなってゆくのを感じる。

 数分後、二人は並んでレジ横のカウンター席に腰掛けていた。手元にはコーヒーカップが二つ湯気を立てている。ガラス窓を正面にしたその席では、さきほど自分の鼻腔に傷をつけた空気を含んだ人ごみが形なく流れてゆく様子が臨める。
 美冬は、入れなかった砂糖の紙袋をもてあそんで指の間を移動させている。お互い、どこから話を切り出そうかとうかがう、短い緊張した時間帯だった。
「すっごい久しぶりだよね。全然覚えてなかった?」
「完全に忘れたってわけじゃないけどさ。でも、まさかこんなところで会うなんて思ってなかったから。気づかなくてごめんね」
「それはお互い様だからね」
 そこで、文香は無意識に自分の右手に巻かれた小さなサイズの時計を見下ろした。駅へ向かおうと思っていた時間よりも、既に20分は経過しているだろうか。そこへ、すかさず様子を見て取った美冬が声をかける。
「あ、もしかして時間あんまりない? よかったのに。無理に付き合ってくれなくても」
「ううん。そんなことない・・・別に」
 ほんの少し気弱そうに、美冬は顔を傾けた。文香はその表情と、自分の予定とをちらっと秤にかけてみる。わずかながら、目の前のかつての同級生の表情が、勝っているようにも思えた。
「ほら、文香って今まで同窓会とか、そういう類のものって絶対に顔出さないしさ。もともと、昔話とかそういうのに浸るの好きじゃなさそうでもあったし。退屈なんじゃない? こうして昔の『友達』とこうしてお茶なんて飲んでるのはさ」
 くすっ、と肩をすくめる。友達、という言葉に力を込めたのはちょっとした冗談だからだ。はっきり言い過ぎるのもなんだけれども、当時この美冬とは「わーなつかしー元気だった?ひさしぶりー」とかいう感触で嬉々として盛り上がれるような間柄ではない。どちらかというと、お互いに友達の友達、という認識を持ち合う程度の仲ではなかったか、と記憶している。
 だからこそ尚更、自分に声をかけてきたことが不思議だという興味もあるのだけれど。
 万が一(いや、今時はもっと可能性は大きいか?)でセールスだとか、宗教だとか、そういう関係に話が流れそうになったら、いつでも予定を前面に帰ればいいだろう。そんな気楽な好奇心が、今目の前の女性に向かわせていた理由。いや、一番の、理由はもうちょっと違うか?
「ねぇ。それでさ。いきなりで悪いんだけど一つ聞いてもいい?」
 文香のちょっとした笑顔に安心したのだろうか、美冬はくるっと黒目を輝かせて向けた。
 その瞳が、自分と同じ年齢とは思えないほど、無邪気で明るい色をしている。
 そのことは、先ほどトイレで対面したときにはもう感じていた。
 どうぞ、とそんな自分の中に微かに湧き上がった感情を隠すように文香は答えてコーヒーを口に運ぶ。
「さっきはさ、どうしたの? じーっとトイレでうずくまっててさ。どこか具合でも悪かったの?」
「ああ。それね。大したことじゃないよ。さっきすぐそこを歩いてたら急に鼻血が出てきたみたいで」
 嘘? 大丈夫? と更に付け加える美冬に、弁解するように文香は自覚した症状を告げた。実際、もう出血は完全に止まっているし、どこにも変調らしきものも感じない。美冬はそれを聞くと、はぁ〜、と納得したようにため息をついた。
「そっかー。そういえば昔から文香、突然鼻血出すこととかあったもんね」
「? そう・・・だっけ?」
「うん。すごいよく覚えてるよ。あのさぁ、高2の・・・夏前の・・・ああ、ちょうど今ごろの季節かな? ほら、仲間内で一緒に海にキャンプ行ったの覚えてない?」
 文香のカップを持っていた手が止まった。ややくたびれた色の柱の旅館。魚ばかりの質素な料理。大きすぎなスイカと浜辺で上がった花火。そして、脳裏を埋める深紅の色。ざぁっと、鮮やかな映像が頭の中をすばやくよぎる。まさに、さきほどトイレで思い出しそうでできなかった景色のそのまま。
 だけど、なんとなくそのことをそのまま言い出すことがはばかられて、文香は「そう? ああ、そんなこともあったっけね」とごまかした。
「そうそう。みんなでさ、ちょっと旅館から遠出した場所まで出ようとしてた時で。出ていくらもしないうちにいきなり文香が鼻血出しちゃって。それで大事をとるためにとりあえず横になった方がいいんじゃない? って話になって、ほら、旅館に戻ったじゃない」
「よく覚えてるね。そんなことあったっけ?」
「あったよー。だって、そのとき一緒につきそったのって、私だったよ?」
 え? と文香は美冬を見る。
 いきなり、ざくっ、と何か核心のようなものが刺さった気もする。美冬は笑っていた。数年前にかけた迷惑を謝ろうとする態度をいさめるかのような、先回りした笑顔。
「今までも、けっこうあった? そういうこと」
「あ、鼻血? いや。それがね、高校卒業してからはもう全然。今日はだから、本当に久しぶり」
「へぇ・・・。なんだろうね、いきなりねぇ・・・」
 話がそれた。文香はなぜか宙ぶらりんにされたようにも思えた。何か。何かまだ自分が思い出していないことがあるような気がする。話には、もうちょっと続きがあったような気がする・・・
「今は?」
「何が? え?」
「今、文香は何をやってるの? その・・・仕事とか」
 ちょっと言葉に詰まった。別に、それは劣等感を感じさせる質問ではないのだけれども、本能的に。隠しても仕方のないことだし、見栄を張っても何の得もないだろう。
「普通だよ。普通に大学卒業して、民間企業に入社して。適当にやってる」
「結婚は? してる?」
 微かに口元をゆがませながら文香は首を振った。右手の薬指の指輪を、なんとなく隠すように手のひらを自分で重ねた。美冬が、言葉の続きを言いたそうにしながら、黙って言葉を飲み込んだのを気配で感じた。
「美冬の方こそ。どんな感じなの? 今」
「あ。私? 私ねぇ・・・」
 あはは、と照れたような笑い方をした。妙な、といってはおかしいかもしれないが、どこか意味深な感じを与えてくる。
「あのさ! 文香」
「な、何? どうかしたの? 急に」
「そう、急で悪いんだけど。これから家に来ない?」
「はぁ?」
「家さ、実はこのすぐ近くなの。いくらも歩かないんだけど、詳しい話はそこでしない?」
 唐突な申し出。文香は半分ほどしか手をつけていないコーヒーを手の上にしながら、また少し考えた。確かに、興味がないわけではないけれども。
「今日なの? どうしても?」
「うーん。別に後日でもいいといえばいいけど・・・やっぱね」
「『今日』がいいんだ?」
「うん」
 右手の時計をこっそり見る。
 予定の時間は大幅に上回るかもしれないけれども、まだ夜と呼ぶには早い時間だし。
 それに、せっかくこうして偶然に出会ったという機会をまたにするというのは、なんとなく運命みたいなものを興ざめにするような行為にも思えた。
「わかった。うん。じゃぁ、ちょっとだけおじゃまさせてもらう」
「よかった! よし、そしたら早く出よう。膳は急げ」
 しかしながら、急ぎすぎじゃないの? と思うくらいに急かして、美冬は文香を外へと連れ出した。


 先ほどの言葉が嘘ではないことを証明するように、喫茶店を出て数分と歩かないうちに、その建物にはたどり着いた。繁華街から路地二つほど抜けた場所のちょっとしたビルの一室。かなりの高層部分にあるらしく、建物入ってすぐにあったエレベーターに乗り込むと、閉じ込められた空間がそれまで知らなかった場所へと移動をさせてくれるような、そんな感覚にも襲われる。
 のっぺりと白い壁に埋まった扉が横に開くと、そこは同じく無機質な色合いの日の差さない通路と、いくつか並んだ扉の場所へと着いた。
 先立って歩いた美冬が不思議な形のカギをその中の一つに差し込むと、小気味よく素直な音を立てて部屋の扉は開いた。
「どう? この部屋」
「どう、って・・・。すごいよ」
 広い作りの2DK。新築の香りもまだ残るくらいで、その調度一つ一つ見ても生活のレベルが高いということはすぐに推測できる。そう正直に告げると、美冬はただ微かに笑った。
「長く住もうと思ってね。無理して買っちゃったんだ」
「買ったの? ちょっと、一体何の仕事してるわけ?」
 悪いことじゃないよ。ちょっとした企業家、ってとこかな? と冗談めかして言いながら、美冬はグラスを二つ持って来た。一つを手渡してから、次の間の扉を開く。その景色を見てすぐ、文香はぎょっと目を丸くした。見間違いと思ってしまったそこは、一面青く塗られた部屋。リアルに空に浮かぶ雲の色がついていて、まるでそこだけが宙に浮かんでいるかのように錯覚するくらい。
「何これ・・・?」
「いいでしょ? ここまで徹底すると、すごくインスピレーション沸くんだ。気に入った?」
「いや・・・その・・・」
「こういう部屋をつくることがね、長い間の夢だったんだ」
 普通、ではダメだと思ってたんだ。
 どれくらいお金があるとか、地位があるとかじゃなくって。
 ただ単に、平凡で収まるってことが、どうしても許せなかったんだよね。
 さらり、と美冬は言った。
 呆然とその人口の空の上を目の前に立ち尽くした文香に、グラスを差し出す。深紅に黒をわずかに混ぜた色彩のカクテル。喉を抜けたあたりで、こみ上げてくる冷たく甘い香りに少し鳥肌が立つ。
「『普通』は嫌って・・・。昔から?」
「性格には数年くらい前から、ってとこかな。願望はかなり昔からあったんだろうけど」
 入るのを戸惑っている文香の脇を抜けて、美冬は空の部屋のカーテンに手をかける。同じく空の色のカーテンを開くと、その向こうには本当の空。だけど、まるでそちらの方が偽者なんじゃないかと思うくらい、色合いのない、くぐもった重たい色の雲がある。
 あれ? と、それを見た文香は思った。
「さっきまで、晴れてたはずなのに」
「? なんだ、やっぱり忘れてたんだ」
 もうそろそろなんじゃない? と、美冬が窓を開くが早いか、待ち構えていたかのように雨音がベランダの手すりを打ち始める。
 若干の混乱を感じつつ、文香は外を見ている美冬に一歩近づいた。
 その間にも、雨はどんどん勢いを増してゆく。
「知ってたの? この雨のこと」
「大体ね。けど、予想したのは私じゃないよ」
「どういう意味?」
 ベランダから戻って、美冬は窓を閉じた。半分ほどだけ閉めたカーテンの隙間から、窓を激しく濡らして景色を変える様子が覗かれる。指先が、文香の胸元をつついた。
「本当に覚えてないの? あなた、昔私に教えてくれたじゃない」
「わからないよ。何なの? 何がどうなってるの?」
「あなたは、自分が『普通じゃない』って。雨のこと・・・何か、勘みたいなものがあるって、そう言ったでしょ? 昔さ」
 言ったか? 文香は強く目を閉じてまた記憶をさぐった。静かすぎる部屋の中に、ざぁ、っと押し寄せるような雨の音がする。同じ音を、言われてみれば確かに聞いたことがあるような気がする。それほど昔ではない。そう、数年ほど前に。
「『何か』が起きるんでしょ? ココに何かあると」
「!?」
 胸元をつついていた指がするりと上って文香の鼻先に触れた。鼻を通る骨の頂点付近でちょっと力を入れられると、瞬間、ツンとまた奥が痛くなったかのような、そんな感じになる。
「あの日。私と二人だけで旅館に戻った日。それから出かけたみんなは帰ってこれないような高波に巻き込まれたよね」
「あ・・・」
「幸い私たちは平気だったけど、同じ日の雨のせいで何人かが死んだ。そうでしょ?」
 そうかもしれなかった。
 だけど、それはもう昔のことだし、それにそれはただ単純に偶然の運のことで。
 言いかけた文香を美冬は止めた。
「二人だけで過ごした夜、あなたが私に言ったこと、私はまだ覚えてるんだよ。『雨の匂いが刺激になる。その刺激のせいで今までもこうして体調を崩したことがある』。っていうのね」
 ぐらっと、足元が揺れるような感覚。頭の中になぜか持っているカクテルと同じような色が走った。
 それは、そのとき自分がかけていた布団の模様の色。
「強い雨の前には決まって鼻の奥が痛くなる、って言い残してあなたは眠った。そして、その夜言ったとおりのことが起きた。今も。それは『普通じゃない』力。だよね?」
「それは・・・。けど、私はそれを自分でコントロールするとかそういうんじゃないし・・・」
「ちょっと。勘違いしてない? 私は何もそれであなたを責めてるんじゃないよ。むしろ逆で、こうしてまた同じく予想を当てたあなたをすごいと思ってるっていうかさ」
 美冬は窓の外に目を向けた。
 雨の反射光を受けている顔は、どこか恍惚としているようでもあり。
「言ったよね。私は、『普通は嫌だ』って」
「・・・」
「本当に、圧倒的に『普通じゃない力』。私の周りで持っていたのは、あとにも先にもあなた一人だったな」
「そ・・・」
「私ね。『普通じゃない』もの。大好きなんだ」
 美冬の黒い瞳がきょろっと油断なく動く。
 すごく嬉しそうに。興味深いというように。
 文香はしかし、逆にその言葉に胸を締め付けられたように思う。
 重い表情を見せてしまった文香から、美冬はグラスを取る。じっとその顔を見る。
「そういうものを感じること、文香は喜んでいないわけなの?」
「感じたくなくても感じてしまうことが多すぎるんだよ。それなら、きっと。何も感じない方がいい。・・・そう思ったりするから」
 空の色を背景に、じっと間近に美冬に見つめられている。
 たぶん。だけどもう、自分が望むと望まざるにかかわらず。
「雨が降っているのは、『運命』みたいなもの? 『宿命』?」
「同じようなものかな」
「逆らう余地っていうの、あるの?」
 美冬の笑う声が、吐息になって唇の近くを温かく触れる。
 静かな背景には雨の音がますます激しく聞こえる。
 少なくとも今日は、きっともう帰ることなんてできないな、と。
 文香は思った。




< 終 >


topへ戻る